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ジル・ビルヌーブをしのぶ
没後25年
10/05/07 15:37


Photo F1-Live.com

在りし日のジル・ビルヌーブ

今からちょうど25年前の1982年5月7日、ベルギーはゾルダー・サーキットで、あの悲劇は起こった。

激しい気性で知られたジル・ビルヌーブ。母国カナダの威信を一身に背負ってF1を駆け抜けた彼だが、決して生まれながらのレーシングドライバーではなかった。なにしろ最初に目指したのはプロのトランペッターなのだから。ところがサーキットに一歩足を踏み入れたとたん、ビルヌーブの心に火がつき、運命は決まった。

家財道具や自宅まで抵当に入れてレース資金を捻出(ねんしゅつ)したビルヌーブ。地元ケベック州のコース、トロワ・リビエルで行われたフォーミュラ・アトランティックのレースに出場した彼は、並みいるスポット参戦のF1ドライバーを相手に優勝を収め、一気に頭角を現した。その走りを目の当たりにしたジェームス・ハント(マクラーレン)は、早速チームにビルヌーブとの交渉を口添えしたのだった。

マクラーレンとの関係は短いものに終わったが、その後、名将エンツォ率いるフェラーリに加入。そこでビルヌーブのF1キャリアは花開いた。

移籍当初こそ成績は振るわなかったものの、その走りはイタリア国民のハートをつかんだばかりか、ビルヌーブの活躍に期待するカナダではF1ブームを迎えた。その頂点に達したのがモントリオールのノートルダム島で行われた1978年最終戦カナダGP。のちに自身の名が冠されるこのサーキットでみごと優勝。国中が新しいヒーロー誕生に沸いた。

1979年はフェラーリのオーダーにより、チームメイトのジョディ・シェクターがタイトルを獲得。ランキング2位となったビルヌーブを前にエンツォは、いずれ彼の時代がやってくることを明言している。また、その年のディジョン・プレノワで行われた第8戦フランスGPでルネ・アルヌー(ルノー)を相手に繰り広げたバトルは、古くからのレースファンの語り草だ。

F1で通算6勝を積み重ねたビルヌーブ。だが、むしろファンの心に焼き付いているのは、信じられないような彼のパッシング、的確なマシンスライド、そして計算しつくされながらも常人では考えもつかない、独創的なドライビングテクニックだ。カスが飛び散ってボロボロのタイヤを抱え、ピットクルーから再三ストップを命じられながら走り続けたレース。ねじ曲がったフロントウイングのまま表彰台フィニッシュを遂げた雨中のレース。そのひとつひとつが今も私たちの心を熱くしてくれる。

ビルヌーブ最後の戦いは、1982年第4戦イタリアGPだった。レース終盤にチームからドライバーに出された指令は、今のポジションをキープせよというもの。ビルヌーブはそれに従い、ラップタイムを一気に5秒も遅らせる。ところがチームメイトのディディエ・ピローニは、それに乗じてチェッカーまであと一周のところでビルヌーブを抜き去り、先にチェッカーを受けたのだった。

Photo F1-Live.com

その走りは、まさにビルヌーブ・ワールド

レース終了後の表彰台で傷心、落胆、そして裏切りに苛(さいな)まれたビルヌーブは、ピローニとの絶縁を心に誓いながら、シャンパンのボトルを持とうともしなかった。1979年には勝利をシェクターに譲った彼は、今や、翌戦ベルギーGPでピローニに復讐(ふくしゅう)せんとする鬼と化した。そんな心理状態が、やがて取り返しのつかない事態へと発展する。

1982年シーズンの有力タイトル候補と目されていたふたりは、ゾルダーでの予選でもポールポジションを巡って激しいつばぜり合いを続ける。そんな時、アクセル全開のビルヌーブの目前に、スロウダウンしていたヨッヘン・マス(マーチ)が迫る。ところがそれまでのイライラで一瞬の判断を誤ったか、ビルヌーブはもろに、そのマシンに追突してしまう。

一瞬、空中に舞い上がった彼のフェラーリは、やがて激しく地上にたたきつけられ、ロールを繰り返しながら散り散りになってゆく。ドライバーシートから投げ出されたビルヌーブは、安全フェンスにたたきつけられる。慌てて救助に向かうレスキューワーカーたち。その場に居合わせた誰もがビルヌーブの元に駆け寄ったが、ほぼ即死状態。救護センターで一瞬、息を吹き返したが、それが最後の生への執着であった。

そうして一生を終えたビルヌーブだが、彼のスピリットは、今も多くの心に息づいている。

ありがとう、ジル!

Daniel BASTIEN
(C) CAPSIS International
M.I.
RACING-LIVE JAPAN




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